ジェローム グループマン, Jerome Groopman, 美沢 惠子: 本
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5つ星のうち 5.0 患者に向き合ったとき、ドクターは何を、どう考えているのか,
レビュー対象商品: 医者は現場でどう考えるか (単行本)
【ドクターの思考回路】ドクターとのコミュニケーションが、その仕事の大きな部分を占めるMR(医薬情報担当者)にとって、ドクターの思考回路を知ることは重要な意味を持つ。この観点から注目に値する書が出版された。ドクターの手に成る『医者は現場でどう考えるか』(ジェローム・グループマン著、美沢惠子訳、石風社)である。著者のジェローム・グループマンは、ハーヴァード大学医学部教授で、がん、血液疾患、エイズ治療の第一人者である。
【著者の臨床体験】
「本書は、患者を診察するときに医師の頭の中で何が起こっているかに関する探索の書である」と著者が述べている。この本を書こうという思いは、「3年前の9月のある朝、インターン、研修医(レジデント)、医学部学生の一群を連れて回診してい� �とき、不意にやってきた」。回診後、会議室に戻り、問題について話し合うのを常としているが、「とても頭のいい、愛想のいい医学生、インターン、レジデントたちは、的を射た質問をしたり、注意深く相手の話を聞いたり、鋭く観察することに関しては、ほとんどが落第生だった。彼らが患者の問題についてあまり深く考えていないことに私は気づいた。つまり、臨床的な謎を解き、人間のケアをすることの教育方針に深刻な欠点があると感じた」からである。
「瞬時の判断における思考メカニズム」、「医師の感情と診断ミス」、「家族の愛が専門家を覆す」、「前例のない症例に向き合う」、「大量データによるミスとエラー」、「病でなく人を治療する」といった各章で、著者自身の臨床体験と著者が見聞した臨床事例が� �失敗例も含めて具体的かつ率直に語られる。
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【診療のパートナー】
「私は30年間、医師をしているが、患者について考えるときは伝統的な情報源の助けを借りてきた。教科書や医学雑誌を読み、私より深い、あるいは幅広い臨床経験を持つ恩師や同僚に相談し、鋭い質問をする学生やレジデントと話してきた。しかし、本書を書いて気がついたのは、さらに私の思考の向上を助けてくれる掛け替えのないパートナーがいるということである。そのパートナーは、適切かつ焦点の合った質問をするだけで、医療ミスを招く認識エラーの連鎖から私を守ってくれる。臨床判断を行う際にも、その人は現場にいる。そのパートナーとは、私が何を考えているのか、私がどう考えているのかを知ろうとする私の� ��者であり、患者の家族またはその友人である」というのが、著者の信念だ。虚心に患者と向き合い、患者の物語を聴き取ろうと努める謙虚で真摯な一人のドクターがここにいる。
患者にとって、ドクターが何を考えているかが分からないと、ドクターとうまくコミュニケイトできないが、このことはMRにも当てはまる。また、患者がドクターに質問すること、さらに、ドクターのような思考法で考えることも可能だが、このこともMRが心に留めておくべきことだろう。
【製薬企業との関係】
「医療市場の怪物――マーケティングとお金と医学的決断」という章は、米国の製薬企業にとって、かなり厳しい論調で書かれている。強引なMRも登場するなど、耳が痛い事例が多いが、私たちも海外の事例だからとの知らんぷりは許さ� ��ないだろう。
著者は、「良い治療法は、健全な製薬産業の産物でもある。以前は不治だった多くの病が、今は新薬のおかげで治せるようになった」と製薬企業の功績 を認めているが、「しかし、医師と患者が治療法を決定する際には、双方が何を必要とし、何を目標としているのか考慮すべきであり、効用(ベネフィット)とリスクを認識しながら治療法を選択すべきである。その選択は、製薬会社の金銭的な利益ならびに企業マーケティングによるバイアスとは無縁であるべきだ」と手厳しい。
返す刀で、「医学を天職としてではなく、ビジネスとして考える」医療体制にも警告を発している。
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5つ星のうち 5.0 あたりまえの日常からの分析、日本の現実と少し違うかも。,
レビュー対象商品: 医者は現場でどう考えるか (単行本)
おもしろかった。引き込まれるようにして読みました。医師自身が仕事に集中できないとき、イヤな患者さんが来たとき、自分の想定通りに治療が進まないとき、業者がプレゼントをもってきたとき、など、それらが意思決定にどんな影響を及ぼすか、というのはごくあたりまえの日常からでてきたテーマについての分析です。
著者は一般の読者を対象に書いたとのことでしたが、自分自身の経験や他の医師との関わりの中で疑問に思っていたこと、感じたことがそのままズバリ書いてあり、とても共感できました。
アメリカの病院は分業が進んでいて、医師はdecision makingに専念することができ、個人のクリニックなどでは比較的患者一人一人の話を聞く時間がある、というのが特徴だと感じていました。そのためこのようなテーマの本が出ることは何ら不思議ではないという気持ちがします。
しかし、日本の医師はシステムやマンパワーの違いのためか、必ずしも、decision makingだけをしていればよいというわけではないし、一般の病院ではひとりひとりの患者さんの診察に長く時間を取れないというのが現実。
また地域差はあると思いますが、まだまだ自分の治療を医師まかせにする患者さんが多いのも現実です。
この本に書かれているように「患者に自由に自分の病気を語らせる」ということを含めて、日本ですべて応用できるものばかりでもないという気もしました。
それでも私は、この本をもっと多くの医師に(また臨床にかかわるすべての人に)読んでもらいたいと感じています。
CPAは、どのくらいのお金を稼ぐん。
余談ですが、最終章は、著者自身、そして私自身の専門とつながることが書いてあり、自分がこの分野を選んだことの重大さを改めて感じることができました。襟を正して、仕事に打ち込もうと気持ちを新たにしました。
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5つ星のうち 5.0 医者は自らの「誤診」から学び、成長する,
レビュー対象商品: 医者は現場でどう考えるか (単行本)
医者が、長い教育期間や研修を終え、臨床現場に配属された後、どのようにして「臨床の知」を獲得していくかというプロセスを、多くの患者やその主治医へのインタビューを通じて浮かび上がらせる。非常に知的な刺激に満ちた、医者以外のプロフェッショナルの成長にも十分通じる良書である。一言でいえば、医者は「誤診」という、最善の手段を尽くしても避けられない痛い経験を通じて、優れた臨床医に育っていくのである。医学教育で、学生は多くの知識を学ぶが、それはある種の「診断パターン」として定型化される。医者のタマゴは、臨床現場で一生懸命そのパターンを実際の患者にあてはめ、診断を行う。著者は、この類型化が行き過ぎることで「認知エラー」と呼ばれる誤診につながることを多くのケースを通じて明� ��かにしていく。患者の個人差に目をつむり、診断を行い、あえて病名をつけ、治療に回してしまうのである。こうして稀ではあるが、何人もの医者を渡り歩いても納得いく診断が得られず、病態が進展する不幸な患者が生まれていく。自分の誤診から積極的に学ぶ医者は、患者やその家族から学ぶことが多いことも事例から明らかにされる。
本書の内容は、医者以外のプロフェッショナル育成にも通じるところが多い。たとえば、松尾睦著『「経験学習」入門』(ダイヤモンド社)によれば、能力あるビジネスパーソンも、成功や失敗の経験を反省し、次のチャレンジに生かしていく。本書のような医者の臨床現場は、救急治療室がその典型であるように、一瞬一瞬が経験サイクルを構成し、独自の「臨床の知」の現場となる。「認知エラー」をいかにして避けるか、など医者の臨床経験から一般のプロフェッショナルが学ぶところも多い。
本書は、アメリカ医療の現場報告としても興味深い。著者はアメリカの医療格差にはほとんど触れていないが、プラーマリーケア医の悩み、救急医療の問題、高医療費の問題、製薬会社と 医者の関係など、読者の視点によって様々な読み方が可能である。日本の医者からは生まれそうにない(残念だが)、刺激的な一書としてお奨めしたい。
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